低コスト投資信託への最大の障壁を考える |
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前回のバンガードセミナー紹介のエントリーで、バンガード社が運用するファンドのエクスペンスレシオ(経費率)が年々右肩下がりで減少していることを紹介しました。
純資産残高が増加基調の投資信託においてエクスペンスレシオが年々低減するのはバンガード社に限らず、一般の投資信託に見られる事象です。 その理由をファンド運用会社のコスト構成に求めることができます。ファンド運用コストは主にインフラ部分で構成される固定費と契約数に応じて比例的に発生する変動費に大別できます。 ここで、運用ファンドの資産規模が増加した場合、収入と変動費用は資産規模に比例して増加しますが、固定費用は単純比例的には増加しません。そのため、ファンド純資産残高の増加により、経費率は低下します。いわゆる規模の利益の効果が発現します。 そこで、この規模の利益の効果を日本の長期投資のパイオニアであるさわかみファンドの成績で検証してみました。
まず、検証対象にさわかみファンドを採用した理由を示しておきます。当ブログが直販投信会社のファンドの情報を主に着目しているからとの理由も一理ありますが、エクスペンスレシオの推移が検証可能な日本の投資信託は極めて限定されるのが実情です。
信託報酬には運用会社、受託会社、販売会社の利益が上乗せまず、投資家が日本の投資信託を購入した場合には運用期間中の毎日、運用に掛かる費用として定率の信託報酬および売買手数料、監査費用などの運用実費(ファンド直接経費)が徴収されます。運用会社、受託会社、販売会社の各社は各々が担当するファンド運営諸事務にかかる費用を受領した信託報酬の中から支弁し、残った信託報酬が各社の営業利益となるビジネスを営んでいます。 従って、投資信託運営がビジネスとして継続するためには信託報酬率 > エクスペンスレシオの関係が成立する必要があります。 すなわち、投資家が負担する信託報酬には関係各社の利益が上乗せ済なのです。 運用会社のエクスペンスレシオの把握は困難そこでファンド投資家は、どの程度利益が上乗せが行われているか把握するためにエクスペンスレシオを測定を試みようとしますが、これが著しく困難です。なぜなら、通常の運用会社は複数のファンドを運用しているため、運用会社が会社として支出した費用が存在するからです。 各ファンドの収益費用の管理を行う場合には、各ファンドへ費用配賦する必要がありますが、運用会社の実情に詳しくない部外者が各ファンドへの費用配賦基準を適切に設定するのは困難です。 しかし、さわかみ投信株式会社はさわかみファンド1本のみの運用であり、かつさわかみファンド運用が事業の大部分を占めるため、会社として発生した費用をさわかみファンド運用に要した費用と推定しても大きな乖離は生じません。 加えて、さわかみファンド運用開始から8年以上を経過しているため、経費率の推移を把握するためにさわかみファンドは適切な素材なのです。 さわかみファンドもエクスペンスレシオが低減している執筆時現在、さわかみ投信株式会社の財務諸表は2002年3月期から2007年3月期まで公開されています。そこで、当該期間で営業経費率を算出した結果、経費率は年ごとにきれいに右肩下がりとなっています。2007年3月期は経費率が0.43%まで減少していました。営業利益率に換算すると50%を超過している状況です。 もちろん、過去の赤字解消を終えたばかりのさわかみ投信ですので、現状で儲けすぎと言っているわけではありませんのであしからず。しかし、将来はどう見られるのかはわかりません。 ![]() ※受託会社取分(0.1%)はさわかみ投信の収入でないため信託報酬から差引ています。 さわかみファンドの経費率推移を見ると、日本の投資信託の現状と今後に幾分かの懸念を抱かざるを得ません。 エクスペンスレシオの低減効果が投資家に帰属しない日本の投資信託の最も大きな問題点は契約型投資信託で組成されていることです。契約型投資信託では投資家と運用会社であらかじめ合意した契約内容に基づきますが、運用会社におけるコスト低減効果を契約に反映させたいと投資家が考えた場合、契約条件(目論見書)の変更という過程が必要となります。個人投資家がこの交渉を行うことは難しいでしょう。 従って、投資家が購入前に低コストの投資信託を探求する行動には合理性があります。初めの条件が最も大事なのです。 また、契約内容に一定の純資産残高を超過した場合には信託報酬等を割引く条件をあらかじめ指定しているファンド(ありがとうファンド、セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド、セゾン資産形成の達人ファンドなど)も存在しますし、セゾン投信のように将来的に信託報酬率の改定を念頭においている運用会社も存在しますが、保証された約束ではないことに留意する必要があります。 ここで仮に会社型投資信託の場合は、ファンドを購入した投資家はファンド会社の持分を保有していることになります。従って、コスト低減効果による事務委託費の減額を運用会社と交渉するのは投資家を代表するファンド会社となるため、幾分かはコスト低減効果も享受できそうです。実際、日本の会社型投資信託版であるJ−REITについては事務委託費の低減が行われた事例をよく目にすることができます。 冒頭のバンガード社のミューチュアルファンドは会社型投資信託であり、かつミューチュアルファンドが運用会社であるバンガード社を保有しているため、エクスペンスレシオ(経費率)の低減効果をバンガード社ではなくミューチュアルファンドに帰属させることが容易にできるのです。 今後、貯蓄から投資への流れが継続すると、ファンド資産残高増加による規模の利益が運用会社に滞留することになります。 従って、投資家は以下に留意して投資信託を選別する必要があるのではないでしょうか?
低コストの投資信託を予め選択すれば、より大きな利益をファンドに残すことができます 投資家重視の哲学が一定範囲で契約として盛り込まれている 今後、投資家重視の哲学が反映する可能性がある?? ※ファンド運用会社(委託者)の財務諸表はEDINETで開示されています。 ブログランキングに参加中! ![]() |
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